第23話

進駐軍と美容

 

わたしから申し上げるのもおかしい話ですが、進駐軍のマダムたちからは、
「本当に、安くて、よく似合って、すてきだ」
と外交辞令ではないおほめの言葉をいただきました。
その当時、安いといってもコールドの料金は、1000円から2000円くらいだったのです。
日本ではまだまだ高価な料金でしたが、アメリカのコールド料金は一万円くらいだったそうですから、あちらの方から見れば、随分安い料金に感じられたのではないでしょうか。
安いといっては石鹸や、コーヒーなどをもって来てくれるのです。

よく進駐軍のお宅にも呼ばれていきました。
「ドライヤー」をジープに積んでもらっていくのです。
誕生日などにも招かれました。
そして感じたカルチャーショックは、あちらのご婦人は、ご主人に
よく尽くすということでした。
ご主人が出張から戻る日には、必ず髪をセットして、美しく装って夫の帰りを待つのです。
ですから、女性対象の講演会などで、わたしはよく言うのです。
「皆様は、朝、ご主人がお出掛けのときはカッポウ着、お昼に外出する時はおしゃれをし、夕方、ご主人の戻るときは、またカッポウ着に、髪はボサボサ、化粧もしない。
だから、殿方はほかの女に目が向くのよ----せめて髪を整えて、薄化粧くらいしてお迎えしたらいかがでしょうか」と。

お互い知り合うと言うことは、こころが通じ合うということです。
彼女たちの帰国には「別れの寂しさ」もありました。
日本の思い出に「ゆかた」をプレゼントしました。
帯の結び方とか着方など教えてお渡しするのです。
とても喜んでくれて
「帰国の船の中で着て行く」という方もおりました。
ただ、残念だったのは、十分な会話ができないことでした。
相手の言葉がしっかり分かったらどんなにすばらしかっただろうと今でも思っています。

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