第31話

評判になった日本の花嫁三態

 

ダラス、ヒューストン、ボストンなどのショーでは「日本の花嫁三態」として「十二単衣調おすべらかし」「打ち掛け」「振り袖」などをお見せしました。大会には日本領事夫妻も出席されました。現地の新聞も度々報道してくれました。

向こうの人は「十二単」の実物を見るのは初めてなので、大変悦んでくれました。

テレビ中継のときです。テレビ局のディレクターから注文がありました。
「舞台の上で、打ち掛けから振り袖の着替えを二分以内にやっていただけますか」
といわれ「いいですよ」と、簡単に引き受け、一分五十秒で着替えを終えたら、神業だとたいへん驚かれ、拍手の嵐の陶酔に浸ることができました。
日本独特の「引き抜き」を作って持参していたからです。

ダラスではこんなこともありました。
モデルはむこうの教会婦人会の方々のお嬢さんたちでした。「かつら」を三つしか持って行きませんでしたので「三人のモデル」をお願いしていたのですが、五人やってきたのです。
せっかく日本の着物を楽しみにきたのに「かつら」が三つしかない。
帰すのは可哀想と思って、二人には「新日本髪」を結って、和服を着せました。
アメリカのお嬢さんたちの、その喜びよう。日本のものは何でも珍しかったようです。
扇子を開いたり閉じたり、とうとう破ってしまって泣きべそを書いて謝るのです。
それがとても印象に残っています。

「着付け」「かつら」「メイクアップ」・・・助手がいませんから全部一人でやりました。
やっているときはいいのですが、後の始末がたいへんなのです。おわりますと汗びっしょりです。
肌着を洗って、着物を干して・・・だれも手伝ってくれる人はいません。でも物凄い充実感に震えるような毎日でした。

前のページへ

目次ページへ戻る

次のページへ